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吾輩は・・・

エゾサンショウウオである。

名前は定かではない。

定かなのは、体が一番大きくて

エサの食いっぷりが凄まじい

ジャイアンと呼ばれているアイツくらい。

時に「金持ち」と呼ばれたりするが、

隣のアイツも、また隣のアイツも

同じ名前で呼ばれたりしている。

よって「定かではない」

体はいたって原始的である。

一応、肺呼吸はしているが

喉がプクプク動いてしまう。

外敵に見つからないように

ソーっとしていても、喉だけは

プクプクしている。

よって巷では個体数が

激減しているらしい。

吾輩は週1くらいでエサをくれるお父さんと

気が向いたらエサをくれるお母さん

そしてエサはくれない子供二人

そして仲間のシッポでも食べようとする

危険極まりない仲間4匹と暮らしている。

今日は良い日だった。

吾輩や仲間の糞まみれだった水を

お父さんが替えてくれたのだ。

う~ん。冷たくて気持ちがいい。

あ、仲間の一人が水が冷たすぎて

時折、仮死状態になっている。

大丈夫大丈夫、吾輩の仲間内では

けっこう普通の事なのだ。

気温は15℃くらいが丁度良く

直射日光は嫌いじゃないけど

乾燥するので得意ではない。

よって吾輩たちは乾燥しないように

日光の当たらない玄関で暮らしている。

四方を透明の壁が覆っており

天井には緑色の蓋がされている。

天井の中央にはエサをもらう時だけ

開く天窓がある。

吾輩たちの日々の生活は

基本的に砂利の上で寝るか

壁を上るか、水に飛び込んで泳ぐ、

この3択でしかない。

しかし、今日は違った。

天窓に隙間があったのだ。

気が付いたら外に出てしまっていた。

仲間たちは気づいていない。

吾輩は無我夢中で走った。

また隙間がある。入ってみよう。

あれ?お母さんがいる。

大きな布を干しているらしい。

なんだ?ここは。

でもお母さんのいない方からは

生ぬるい風がくる。

ほぅ。これが噂に聞いたお風呂場か。

吾輩たちなど、落ちようものなら

一瞬で煮えてしまうぞ。

仕方ないのでお母さんの

足に踏まれないように前進あるのみだ。

「ギャア!」

あれ?人間の声だ。

お母さんに気づかれたみたいだぞ。

取りあえず逃げよう…って

体中にくっついたホコリや髪の毛が邪魔で

フルスピードで走れない。

おや?お母さんが吾輩を追い越して

行ってしまった。どこへ行くんだ?

とりあえず休憩をしなければ。

あ、もうお母さんが戻ってきた。

「ほら!ここ見てよ」

「うわ~脱走したらダメじゃないか」

お父さんだ。

そっか、お母さんは吾輩を見つけたけど

捕まえる事ができなくて

お父さんを呼んできたんだな。

でも、もう逃げる力が無いや。

髪の毛が尻尾に絡まって疲れちゃった。

あ、あ、あ。

お父さん、その尻尾を掴んで

吾輩を手のひらにのせてるよ。

でも、もう逃げません。どうぞお好きなように…

そんなやりとりの末、

吾輩は元の緑色の天井の家に連れ戻された。

いつも通り仲間たちは砂利で寝たり

壁を上ったり、水に入ったりしている。

他の仲間たちは知らないのだ。

天窓の隙間を抜けると、物凄く大きな

世界が広がっている事を。

吾輩だけが知っている

新しい世界をもう一度夢見て

今日も壁を上ってみようと思う。

あそこに隙間ができたら

絶対にまた冒険に出るんだ!

決めた!吾輩は

サンショウウ王になる!

…なんだこれ(笑)

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