生徒と接する時(5)
さて、私が最初に赴任した教室を
去る日の話です。次の赴任先を告げられて
3日くらいしか無かった気がします(笑)
私が思ったのは、
自分が担当した二人の生徒です。
せっかく心を開いてくれたのに…
という寂しい気持ちと、
私以外の講師に対しても、
私に見せてくれた新しい一面を
見せて欲しいという期待感でした。
まずは女の子の方。
相変わらず最終日も宿題はやってこず(笑)
それでも最後の日だったので
私の素の部分をガンガン見せて
笑わせる事が出来ました。
最終日だったので、外まで出て見送り
をしたのですが、その時、その子は
私に「次は絶対に宿題やってくるね」と
言ってくれました。
実は上司との約束事で自分の異動に
ついては生徒に言えない事に
なっていたのですが、頑張って宿題を
やってきた日に私がいないというのが
申し訳なくて、この子にだけはこの時に
異動の事を伝えたんです。
女の子は「え?」と一言つぶやいて、
しばらくジーッとしてしまったのですが、
その後にスっと小さい右手を私に向かって
出しました。「握手」です。
グッときましたよ。
最初に来た時に見せた「見透かした目」
から半年。試行錯誤の末に、自分の素を
見せる事で距離を縮める事ができて
最後に私を信頼して「宿題をやります」という
宣言まで得る事ができたんです。
その子が、握手を求めるというのは
「これから頑張って」というのもあるのでしょうが
私には「自分を認めてくれた証拠」だと
思いました。本当にありがたくて、
涙が出そうになりましたもの。
男の子の方は、部活をやっているので
最後の時間帯だったのですが、
相変わらず言葉は少ないながら
私の話をニコニコ聞いてくれるようになっており
最後の日も充実した授業をできたと思います。
帰り際に私が玄関先で、色んな生徒に
「さようなら」と声を掛けていた時です。
聞き覚えの無い声が聞こえたんです。
「先生、あのね…」と…
色々な生徒でごった返していたので、
私は、その声の主が誰だかわからなくて
キョロキョロしていたのですが、
結局、その続きの言葉を聞けずに
生徒達は全員帰ってしまったんですよね。
実はこの声の主が、例の男の子だったそうです。
この男の子は、今までは授業が終わると
サッと帰ってしまう生徒だったので、
気づかなかったのですが、いつも通りに
早く帰ろうとしたときに、私の上司が
この生徒に「大井先生が最後の日だった」と
伝えてくれたそうなんです。
それを知った、この男の子は
何かを言おうとしたようなんですが、
いじめっ子たちも玄関先に出てきたので、
また揶揄われるのが嫌で
帰ってしまったみたいです。
少し残念でしたが、この2年後に
この男の子から手紙を頂きました。
さて、次回はその手紙の内容です。
なんかすごく長くなってしまった…
出版社の皆様、
書籍化するなら早めに声かけて下さい(笑)