部下への信頼(1)
私が社会人になって
初めて部下を持った時には
全く人が信用できず、
すべて自分でやってしまっていました。
塾の先生ですから部下と言っても
アルバイトの先生の事なんですけど。
口には出しませんでしたが
心の中ではバイトなんかに任せてたまるか
っていうのが、どこかにあったのでしょう。
そのせいか授業に干渉する事も多く
授業後のミーティングなんかも
基本的に私による激ヅメ会議
みたいになっちゃって…
そんな感じなのですぐに
バイトも辞めちゃったんです。
そういう甘ったれたところも含めて
バイトなんて信用できない…って
思っていたんです。
それでも生徒数はみるみる増えていき
教室としては順風満帆だったんです。
私の頭の中を覗いては。
生徒数が増えていくと
私の頭の中で一人一人の
状況の整理がつかなくなってきました。
60人くらいなら完璧に状況を
把握できているのですが、
70人、80人と増えていくと…
あれ?みたいな感じです。
80人を超えた時に、
とある事件が起こりました。
事もあろうか、私が生徒の
名前を間違えたんです。
「〇〇君こんにちわ!」って言っても
反応が無くて…「あ!ごめん」って。
恥ずかしいやら悔しいやらで
私は講師の部屋に籠って絶望の淵にいました。
もう完全に自分の限界を知った瞬間でした。
限界を知るのが怖かったというのも
ありますが、思った以上に自分の限界が
少人数だったことに腹が立ってきて
気が付くと、講師の部屋の机やら椅子やら
蹴とばして暴れていました。
その時、教室から私の異変に気付いた講師が
飛んできて、暴れている私を羽交い絞めにして
「大井さんは疲れているんです、今日は帰って下さい」
と言うではありませんか。
ハッと我に返り、暴れるのをやめた私は
無表情のまま「よろしくお願いいたします」とだけ
言い残し、その日は帰りました。
家に帰り、部屋でボーっとして
自分の限界の小ささと、
名前を間違えてしまった生徒に対する申し訳なさ
から、私の頭に「退職」の二文字がよぎります。
次の日、私は同じ塾内で
唯一尊敬していた先輩社員に電話を掛けます。
情けない事に涙声で前日の不手際と、自分の限界を
知ってしまった悲しみを訴え、辞めてしまった方が
良いんじゃないか?という相談をしました。
先輩は私にこう言いました。
「何を自惚れているんだ?
大井君一人が全部やろうとする事が
自惚れだと言っているんだ。
何のために講師がいると思っているの?
何人かの生徒は講師に預けてしまえ!
定期的に状況を聞いて修正するなら
大井君の判断で修正すればいい
でも実際は、ほとんど修正しなくても
多分、講師の力でかなり生徒の力を
引き出せると思うよ。
具体的に言えば、例えば小学生だけを
預けるとか、中1だけを預けるとか
一番頼れそうな講師に預けてみなさい」
人を信用できない私が限界を知って
講師を信用せざるを得ない状況に
なったという事です。
どうせ退職するなら、
先輩の言う通りにやってみようかと
15人くらいいた小学生を
フリーターで毎日のように来てくれる講師に
預けてみる事にしました。
それがどうなったか…
次回に続きます。