生まれて初めて
教室にはコーヒーマシンが置いてありまして
これミル機能つきなんですね。
何でもミル機能付きのマシンとして
初めて某メーカーが世に送り出した名器
との事です。ビンテージって奴です。
ミルでコーヒー豆を砕いた時に
いい匂いがしますね。
あの匂いには精神を落ち着かせる
効果があるとか。アロマに近いのかな?
今、その効果に浸りながら
昔話を思い出しています。
距離は近いが合格の可能性としては
はるか遠くの志望校に挑むことを決めた
私の生徒は受験まで3カ月を残し
ラストスパートをかけます。
今思い出しても、あの時の彼は凄かった…
冬期講習会の宿題を5日間で全て終わらせた上、
同じ宿題を2回やっていたり
公立高校の5年分の過去問を3周したり
その上で自分の苦手な科目・分野を分析し
私に塾の授業内容の変更を求めてきたり…
その成果は1月の模試で結果として現れました。
可能性が2%から37%まで伸びたのです。
可能性が半分にも行ってないのに
私と彼のモチベーションは激しく上がりました。
冬期講習が終わったら、
普段「休み」の日曜日は
教室開放をしていたのですが、
朝の9時半から夜の22時まで
ずっといるのが彼でした。
彼に私が忠告したのは
色々な問題集をやるのではなく
一つのテキストを完全にマスターする事
自分の出した答えが正しい事を証明できれば
点数を落とす方が難しいという忠告です。
ある時、彼は私に言いました。
「俺が合格したら、本当に伝説の男になるの?
俺だけが伝説じゃなくて、先生も伝説だろ?」
それに対して私が答えたのは
「伝説ってのは誰かにその業績を
後々まで言い伝えられる事であって
先生が君の業績を言い伝えていくつもりだ
先生が自分で自分の業績を後々まで
言い伝えるならば、それは伝説じゃなくて
ウサンクサイって言うんだよ(笑)」
私は覚えています。この会話の後、
彼はしばらく目を閉じて深呼吸したんです。
今考えると、あの会話は
彼だけではなく私の功績となるならば、
もっと頑張れそうだという事を
言いたかったんでしょう。
自分の為ではなく人の為にやるのならば
もう少し精神的に楽になったのかもしれませんね。
そして受験が終わり運命の合格発表の日。
彼から教室に電話が掛かってきました。
「せ、先生、ゴメン。俺、受験番号
忘れちゃったのかも…
おかしいんだ。 俺の番号が載ってるんだよ。
俺バカだからさ、番号間違えてるのかもしれない…」
「おめでとう!伝説だな。このマヌケな電話も伝説だ」
私はこの時、生まれて初めて嬉し涙を流しました。
塾になんか入らないと機嫌悪そうだった入会面談から
調子に乗っている彼を叱り飛ばしたこと
サッカーの試合中の「あきらめるな」の声
これまでの彼の頑張りが一気に頭を駆け巡り
目から熱いものが…って言いますけど
本当に込み上げてきて出るものなんですね。
もちろん、この年も不合格者はいましたから
両手離して喜べる程、余裕はありませんでしたが
誰もが「無理だ」と突き放した生徒が
彼自身の努力と根性で合格する瞬間に
立ち会えたのは、私にとっても自信になりました。
彼は4年後、
私の塾に講師としてアルバイトをする事になります。
学校の先生や保護者の方に
「そんな高校行けるわけ無いだろ」と言われた子には
特に親身になって熱血授業を展開し
生徒から慕われる素晴らしい時間講師になりました。
彼は将来、学校の先生を目指しているんだそうです。
彼なら「絶対に無理」なんて言わずに、
最後まであきらめないという姿勢を
生徒に伝えていける良い先生になるでしょう。
私は彼の伝説を、
この通りブログでも言い伝えております。
「あきらめない」の6文字は
こんな奇跡を起こせますよと。